今回ご紹介するのは秋田県を代表する酒「まんさくの花」を醸す、日の丸醸造さんです。
蔵は秋田県横手市の市街地から少し離れた増田町にあります。
取材当日は雪が降ったり止んだりの空模様。
今年の雪は例年よりかなり少ないそうです。
蔵の中には沢山の稲が飾られていました。
まんさくの花は米の種類がとても豊富。
県内、県外のさまざまな米を使用して酒造りが行われています。
漫画「もやしもん」作者、石川雅之先生を始め、著名人の写真やサインが沢山飾られてありました。
タンクに所狭しと描かれている無数のもやしもん。
こちらは「もやしもん」タンク。
ちなみにもやしとは種麹のことです。
野菜のモヤシではありませんのであしからず(笑)
蔵の内部は資料館のようになっています。
こちらでは写真と文章で酒の造り方が解説されています。
ご覧下さい!
この数々のラベルを!
「まんさくの花」はとにかく商品点数が多い!
壁一面にラベルが展示されていました。
蔵に展示されているのは酒造りに関する物だけではありません。
こちらは田植えの時に使用される定規です。
この定規で苗と苗の間隔を計って均等に植えていきます。
こちらは「梵天(ぼんでん)」の頭飾りの造形品。
「梵天」は約300年の歴史を持つ商売繁盛、家内安全を祈る小正月行事。
現在、増田町では毎年旧正月である、2月20日に一番近い日曜日に開催されます。
実はここまでは一般の方でも見学することが可能です。
見学は有料ではありますが、見学の最後に一部の商品を試飲することも出来、試飲代込みと考えるとお得なのではないでしょうか。
ここから先は一般の方には公開されていない酒造りの現場です。
こちらは米の貯蔵スペース。
秋田県産の米が中心でした。
これらの米が数々の工程を経て酒になるのです。
蔵の内部から表玄関に向かって撮影。
長い通路が続いているのがお分かり頂けるのではないでしょうか。
通路の途中にあるのが精米室。
まんさくさんは全量自社精米です。
これもこだわりの1つ。
こちらは釜場。
米を蒸す甑(こしき)と放冷機。
実はこの放冷機、新品です!
新品の放冷機は初めて見ました!
画像の左側の方が杜氏の高橋良治(たかはしりょうじ)さん。
右側の方が蔵元のご長男、社長室長の佐藤公治(さとうこうじ)さんです。
今回はこのお二人に蔵を案内して頂きました。
釜場の隣にある、とあるスペースに移動。
「つつんであげましょ優しくね」
ここがどこだか皆様、分かりますか?
これは大ヒント!
「酒のおかあさん」
これはもしや?!
そうです。
正解は酒母室。
酒の元になる酒母は別名「もと」とも呼ばれます。
この小さなタンクでまずは酵母を増やします。
こちらでは洗米が行われています。
洗米、浸漬をキッチリ行うことで上質の蒸し米に仕上がります。
朝の酒蔵の風景と言えばこれ!
甑(こしき)から上がる蒸気ではないでしょうか。
さて、そろそろ米が蒸し上がります。
米が蒸し上がりました!
蒸し上がった米はクレーンで吊るし上げられます。
クレーンで吊るし上げられた米は隣の放冷機へ。
放冷機で蒸したての米を冷まし、乾燥させてほぐして行きます。
撮影時の米は麹用ですので、放冷機を通過中に種麹(たねこうじ)がふりかけられています。
高橋杜氏が上からチェックされていますね。
放冷機を通過し、種麹がふりかけられた米をコンテナに集めます。
コンテナに集めているということは…。
そうです!
蔵人さんが連携してコンテナを麹室(こうじむろ)に運んで行きます。
1階からベルトコンベアーに乗せて。
2階の麹室に運びます。
実はこちらも麹室です。
しかし、こちらは普通の麹室とは違うんです。
紙垂(しで)に隠れてよく見えないと思いますが、「麹'sゆりかご」と書かれています。
さて、ゆりかごとはいったい?
これは初めてご覧になる方が殆どではないでしょうか。
というのも、日本でもこの蔵にしか存在しない機械なんです。
麹米がゆりかごに揺られながらゆっくりと回転しています。
「麹'sゆりかご」とは手間の掛かる麹造りである蓋麹、箱麹と同様の麹を機械で造ってしまおうという、自動製麹機。
元々は秋田県醸造試験場の田口先生が開発された機械で、夜間作業の軽減を目的に購入されたそうです。
一滴入魂!
こちらは佐瀬式の圧搾機。
槽(ふね)に醪(もろみ)が入った酒袋を敷き詰め、上からゆっくりと圧力を掛けて搾ります。
こちらは三段仕込みの最後、留添(とめぞえ)の様子です。
エアシューターで運ばれて来た米を櫂棒でかき混ぜています。
この酒は佐野屋にやって来るのでしょうか。
午前中の仕込み作業を見学した後、車で移動。
JR十文字駅のすぐ近くにある、営業部の事務所に到着しました。
「まんさくの花」では蔵の内部で瓶詰め、では無いんです。
搾られた酒をタンクでこちらの営業部まで運んで瓶詰めされています。
左側のタンク、これで搾られた酒を蔵から営業部まで輸送します。
このように、仕込みと瓶詰めが別の場所で行われている蔵は他にもございますが、かと言って決して多くもありません。
瓶詰めラインを見学させて頂きました。
まず最初にこちらで酒を瓶に詰めて行きます。
次にこちらで栓を被せます。
打栓機で打栓されました。
ラインは次の工程へ進みます。
ご覧下さい!
これがパストライザーです!
パストライザーは火入れ(加熱殺菌)を行う機械。
まず、このラインを通過する際に瓶の上から熱いシャワーを瓶に吹きかけます。
次に、冷たいシャワーを掛けて一気に冷却。
こうすることで、酒へのダメージを極力軽減し、火入れを行うことが出来ます。
「まんさくの花」の美味しさの秘訣とも言えるのではないでしょうか。
こちらは超大型冷蔵庫。
デカい!とにかくデカい!
しかも、この規模の冷蔵庫が敷地内に2つもあるんです。
約13万本収容可能なのだとか。
「まんさくの花」では殆どの酒を搾った後、すぐに瓶詰め。
瓶詰め後、速やかに火入れを行った後はこちらで低温瓶貯蔵。
タンク貯蔵に比べ、スペースの問題、破損のリスク等、コストと手間はかなり掛かりますが、フレッシュかつ、円みのある味わいの酒に仕上げる為に敢えて瓶貯蔵という方法を採られています。
懇親会のお店はこちら「佐藤養助 漆蔵資料館 養心庵(さとうようすけ うるしぐらしりょうかん ようしんあん)」さんです。
創業1860年の老舗。
稲庭うどんの代名詞と言っても過言では無い、「佐藤養助」さん。
こちらの養心庵さんは海外人気ドラマのロケでも使用されるなど、増田町の観光名所にもなっています。
店内はレトロな雰囲気。
囲炉裏もありました。
こちらが店内にある漆蔵。
本来は撮影禁止なのですが、お店の方に特別に許可を頂いて撮影させて頂きました。
ゴージャス!
さあ、懇親会の始まり始まりー。
造りの真っ最中にも関わらず、高橋杜氏が参加して下さいました。
「まんさくの花」を高橋杜氏に注いで頂けるだなんて!
感激です!
佐藤公治社長室長にもご同席頂きました。
まずは乾杯!
乾杯の酒は純米大吟醸の山田錦45。
美しい香りと柔らかい甘味がたまりません。
地元秋田県の海の幸、山の幸をふんだんに使った料理の数々。
「まんさくの花」は料理を引き立ててくれます。
特大の秋田名物「きりたんぽ」
ですが、これはさすがにデカい!
こんなに太くて長いきりたんぽは初めて見ました!
先程のきりたんぽがたっぷり入ったきりたんぽ鍋。
そして、セリ。
更に忘れてはいけないのがセリの根っこ。
セリは根っこが旨い!
お鍋と生もとの真人のお燗の相性はバツグン!
酒造りはもちろん、ラベルデザインからホームページ作成も手掛ける佐藤公治さん。
公治さんは話の引き出しがとにかく豊富。
公治さんの話をアテに幾らでも飲めます(笑)
シメは当然稲庭うどん!
つやっつやです!
喉越しがとても良くて、シメに最適。
秋田県の郷土料理と「まんさくの花」を満喫させて頂きました。
写真/清野達也
文/金巻 忍