今回も蔵元サイドのご好意で、店主吾郎が酒造り作業のお手伝いが実現しました。
鶴齢の刺繍が胸に入った白衣と白帽を着用し、気合いを入れる店主吾郎。
地下200メートルから湧き続ける地下水。
この地下水は先年掘り当てたばかりの新しい水源とのことで、土砂などが混ざっているため、まだ酒造りには使用できない。
約1年間、きれいな水質に安定するまで放流を続けているとのこと。
手に触れた地下水の水温は22度前後で、地中は思った以上に暖かい。
洗米の作業前に、ザルに入っている米の重さを秤で微調整。
米一握りで天秤のバランスが崩れる微妙な計量で、一見簡単そうだがなかなか難しい。
この米は、鶴齢が近年特に力を入れている新潟の新品種「越淡麗」。
今井杜氏によると、数年前に杜氏が先頭に立って、兵庫県特A地区(東条地区)の山田錦生産者のもとに地元農家を連れて行き、そこで良い米を作るための勉強会を開催してもらったそうだ。
以後、契約農家さんが作る越淡麗は年々良い米ができるようになり、今年は山田錦の一等米クラスに相当する、上質の米が揃ったとのこと。
精米された米を、洗米機に投入。
上の写真で投入した米は、秒単位で時間を確認しながらストッパーを開放し、水が流れる下部に落ちて洗米される。
洗米された米をザルで受け止め、指定された半切りに沈めて吸水を行なう。
吸水が終わり水から上げられた米を再度確認。
半透明だった米が水を吸い、乳白色に変化しているのがおわかりいただけるだろうか。
余計な水分がなくなり、サラサラの手触りになった米は明日の「蒸し」に使うため、甑に移す。
蒸し米をクレーンで吊り上げているワンシーン。
クレーン移動の指示を出し、現場監督の体験もさせてもらった。
麹室に引き込んだ米を広げる作業をお手伝い。
これまで多くの蔵で酒造りの体験をさせていただき、麹の手入れ作業はだいぶコツを掴んだと思う。
慣れた手さばきで素早く米を広げていく。
酒母室で元気に湧き立つ酒母タンクを見せてもらう。
プチプチと小さい泡が、ささやきかけるように湧き続けていた。
大型タンクが並ぶ仕込み部屋。
写真ではお伝えできないが、この仕込み部屋ではクラシック音楽が常時流されており、これは音の波動が酒の発酵に良い影響を与える、とのこと。
翌日の添仕込みに使う「枝桶(えだおけ)」を軽く櫂入れさせてもらう。
枝桶(添桶)とは、本来の大きなタンクでの仕込みを行なう前に、少量のもろみである添仕込の段階のみ、小さめの桶を一旦使用し、添仕込みと「踊り」を行うためのもの。
現在では醸造技術の解明によって、いきなり大きなタンクで添仕込を行なう「スッポン仕込み」を採用する酒蔵も多いが、鶴齢では価格や特定名称問わず、全ての酒で枝桶を使う仕込みを徹底している。
ビン詰め工程の現場も見学させていただいた。
近年新調した製造ラインとのことだが、この日は稼動しておらず少し残念。
槽場に案内していただき、しぼられた酒が入って来る貯蔵容器をのぞき込む店主吾郎。
容器の中はからっぽで、これまた残念。
しぼりたての新酒の代わりに、鶴齢の仕込水をじゃのめに入れてテイスティング。
豊富な雪解け水を水源とする巻機山の伏流水は、透明感がある中軟水の水質。
この水があってこそ、鶴齢の淡麗かつ旨口の味わいが生まれるのだと確信した。