今回の訪問先は兵庫県加西市の「富久錦(ふくにしき)」
原料米の全てが地元加西市産。
文字通りの地酒蔵です。
釜場に移動しました。
煙がモクモク上がっています。
では、早速中に入ってみます。
釜場では今日の仕込みに使用される米が甑(こしき)で蒸されていました。
「富久錦」では2台の甑を使用して米を蒸します。
写真手前の大きい方が掛米用。
奥の小さい方が麹米用です。
麹米と掛米を別の甑で蒸すことによって、それぞれに適した蒸し上がりに調整されています。
まず最初に麹米が蒸し上がりました。
スコップで掘って、たらいに入れて行きます。
たらいに移した米を台車で仕込み蔵まで運びます。
台車を使用しているとはいえ、女性にとってはなかなかの重労働です。
仕込み蔵の中にはクレーンがあります。
クレーンで吊って3階の麹室の前に運びます。
こちらが3階。
麹室の前のスペースです。
こちらで蒸し米を広げます。
薄く均等に広げた蒸し米を冷まして行きます。
使用されるのは大きな布。
2人でバサッ!バサッ!と扇いで行きます。
冷ました米を麹室に運びます。
麹室に運ばれた米を手早く均一に広げて行きます。
これが引き込みの作業です。
続いて初添え(はつぞえ)用の掛米も蒸し上がりました。
初添えとは三段仕込みの最初の工程のことです。
ちなみに三段仕込みとは、初添え(はつぞえ)・仲添え(なかぞえ)・留添え(とめぞえ)の3つの工程を指します。
初添え用の蒸し米はクレーンで吊ってたらいに投入。
たらいに移した米を台車で仕込み蔵に運びます。
米を冷ます所までは麹米と同じです。
冷ました米を2階の仕込みタンクに下ろします。
実は3階の床は所々、このように取り外すことが出来ます。
この穴を利用して、下に効率良く米を送ります。
下からも撮影してみました。
下ではこのように受け取られます。
このように上からの米が受け取られ、タンクに投入されます。
そして、櫂入れを行い混ぜます。
「富久錦」では初添えの掛米は手で冷ましてタンクに投入します。
こちらは放冷機です。
蒸し米を放冷機に投入し、冷まして行きます。
放冷機で冷まされた米はエアシューターで仕込み蔵に運ばれます。
今回は三段仕込みの最後、留添え(とめぞえ)の作業ですので、掛米は放冷機とエアシューターを使用されています。
前野さんが櫂入れの途中で米を手に取り、見せて下さいました。
こちらは酒母室です。
酒の元となる酒母を仕込む部屋です。
酒母の温度を上げるための暖気樽(だきだる)をタンクに入れる作業です。
樽の中にはお湯が入っており、かなり重いので、2人で入れます。
暖気樽を入れた酒母タンクです。
暖気樽とは湯たんぽのような物です。
酒母の温度を上げることで糖化の促進や酵母の増殖を調節します。
こちらの方が杜氏の村崎哲也(むらさきてつや)さん。
再び仕込みタンクへ移動して来ました。
櫂入れの作業が行われています。
このように醪(もろみ)を少量掬い取り、漉します。
全てのタンクの醪をこのように採取し、分析します。
こちらは木桶です。
29BYから「純青(じゅんせい)」の一部の酒を木桶で仕込まれています。
ご覧の通り、お世辞にも見た目は良いとは言えませんね…。
しかし、木桶は普通のタンクとは違い、酒により気候風土を強く反映させることが出来ます。
それが木桶仕込みにチャレンジした目的なのだそうです。
こちらは分析室です。
全てのタンクから採取された醪(もろみ)のデータを取って行きます。
この中には今年の出品候補の醪もありました。
今回はご好意で種切りの作業にも立ち合わせて頂きました。
種切りとは、蒸し米に種麹(モヤシ)を振り掛ける作業です。
一度麹室に入ったら、作業が終わるまで出ることは出来ません。
モヤシを降り掛けたら米に落ちるまでジッと動かずに待ちます。
麹室の取材、取り分け、種切りの作業は他のどの取材よりも緊張します!
モヤシを振り掛けたらジッと待ち、米にモヤシが付着するのを待ちます。
その後、引っ繰り返します。
そして、再びモヤシを振り掛けて行きます。
この作業を繰り返します。
種切りが終わったら米を中央に集めて一まとめにします。
酒造りにお詳しい方ならピンと来られたのではないでしょうか。
他の蔵に比べて山が低いんです。
「酒屋万流」という言葉がありますが、蔵によってやり方は様々です。
一塊になった麹をほぐして行きます。
麹を担当されているのは蔵元の稲岡さん。
何と大きな足袋を履き、全体重を掛けて麹をほぐしていらっしゃいました。
ある程度ほぐれた麹を切返機に入れて行きます。
この機械で更にパラパラにし、次はたらいに移します。
こちらが「富久錦」の麹造りの特徴の一つ、たらい麹です。
稲岡さんのお話を伺っていると、どの作業にも強いこだわりがあるのですが、麹造りは特にこだわっていらっしゃいます。
たらいから箱に移された米麹。
この頃になると、米には麹菌の菌糸がビッシリ張り巡らされていて、肉眼でもハッキリと見えます。
最後にもう一度手で塊をほぐし、いよいよ出麹の時を迎えます。
2人で持って外の棚に運んで行きます。
棚に広げられた麹は枯らし場に運ばれます。
こちらで乾燥させます。
さて、ここからは洗米の作業をご紹介します。
洗米機と言えば「ウッドソン」ですね。
採用されている蔵が実に多い!
ウッドソンの洗米機で洗われた米を「富久錦」では再度すすぎます。
これもこだわりの一つ。
徹底的に洗うのが富久錦流。
すすぎ終わった後、吸水させて、水を切ります。
今回、運良く、上槽に立ち合うことが出来ました。
こういうタイプの圧搾機を見ると「ヤブタ」っておっしゃる方が多いのですが、この機械は「ヤブタ」ではありません。
「大倉式」です。
ちなみに、原理としては全く同じです。
しばらく待っていると、搾られた酒が出て来ました。
最初はうっすらと濁っているのですが、徐々に透明度が増して来ます。
正真正銘、搾り立ての酒です!
搾られた酒を稲岡さんが確認されています。
ホッとされたのでしょうか。
私には安堵の笑みを浮かべていらっしゃるように見えます。
こちらは瓶場です。
ラベル貼りの作業が行われていました。
こちらは仕込み蔵の隣にある貯蔵庫です。
「富久錦」では殆どの商品が瓶貯蔵されています。
こちらが仕込み水の井戸です。
蔵の向かいの山を奥に進んで行くと突然表れました。
ここから蔵にホースで送られています。
「富久錦」で使用されている米を栽培していらっしゃる契約農家の岩佐さんの田んぼを見せて頂きました。
奥に見える田んぼ、2月なのですが水が張られているんです。
これは冬期湛水(とうきたんすい)と呼ばれる農法です。
収穫後の稲の株が分解され天然の肥料となります。
また、雑草が生えるのを抑制する効果もあります。
岩佐さんは自らを酒米マニアとおっしゃるほど熱い方です!
さて、ここからは懇親会です!
場所は蔵の敷地内にある「ふく蔵(ふくくら)」です。
乾杯の挨拶はボスが担当!
「かんぱーい」
宴の始まりです!
ここではスペシャルゲストの契約農家、岩佐さんを中心に酒米トークが繰り広げられていました。
映っていませんが、私も向かいでトークに聞き入っていました。
岩佐さん、熱い!!
「チーム富久錦」で記念撮影!
実は今回、初めてのことだったのですが、何と、蔵人全員が懇親会に参加して下さいました。
しかも、皆さん自主的に参加して下さったのだとか!
和醸良酒という言葉がありますが、「富久錦」の皆さんの和が美味しい酒を醸す一番の秘訣なのだと改めて感じました。
「富久錦」の酒、皆さん、是非飲んで下さいね♪
写真/清野達也
文/金巻 忍