鯖江市を流れる日野川。
加藤吉平商店は、日野川の本流と支流に挟まれた扇状地に所在している。
加藤社長に日野川まで案内していただき、現地の空気に触れながら鯖江市の地理、梵の立地について説明を受けた。
完成したばかりの新蔵。
「梵」が未来につながる酒蔵となるべく誕生した、最新設備の新拠点だ。
この新蔵は、地域の防災拠点としての機能を備えていることが大きな特徴。
火災の際には、この消化水槽からポンプを接続して、消火活動を行なう拠点として利用できる。
新蔵の屋上は、災害時に避難場所として利用できるようになっている。
ここから鯖江の景観を、360度ぐるりと一望することができる。
より高度な酒造り挑戦のため、「梵」とタンクメーカーが共同で開発した、最新型の醗酵タンク。(もちろん日本初)。
従来のサーマルタンクと異なり、冷却水がタンクの周りを上下2段に別々に複雑に流れ、より精密な温度管理が可能になっています。
ちなみに検定日は2011年11月1日と「1」並び。
もろみに櫂を入れている現場にお邪魔させていただいた。
一人が櫂を入れてもろみを混ぜ、一人が温度計を手に検温。
梵の蔵の中では、帽子ではなく「梵」のロゴがデザインされた手ぬぐいを着用するルールになっている。
発酵中のもろみをテイスティング。
微発泡のうすにごり酒のようで、この時点で商品になるような出来映えに顔もほころぶ。
ちなみにこのもろみは「梵 中取り純米大吟醸」になる。
「梵」のスタッフに集まっていただき、集合写真をお願いした。
店主がまたしても某男性グループの「あのフォーメーション」をお願いし、今回は加藤社長にも参加ご協力をお願いしました。
蔵見学を一通り終えてゲストルームに案内されると、利き酒用として梵の酒がズラリ勢揃い。
加藤社長と乾杯のワンシーン。
なんと梵の最高峰「超吟」を開封していただき、たいへんぜいたくな乾杯になった。
平野杜氏と乾杯のワンシーン。
仕込みでたいへんお忙しい中、同席していただいた。
この日は「越前がに」の解禁日最初の週末ということで、立派なカニを用意していただいた。
脚についている黄色いタグは、「正真正銘の越前がに」の証だ。
(2011.10.12)
梵の加藤社長より、新蔵について追加のご説明と写真をいただきました。
新酒蔵の大きさがわかるような画像を記載してほしいとのメールが梵に多数届いているとのことで、この場にて改めてアナウンスさせていただきます。
屋外に設置された消火タンクと新蔵の建物外観です。
新蔵の高さは10数メートルあり、4〜5階建てと同じ高さになります。
貯蔵タンクが入る前の、1階氷温庫の内部写真です。
天井まで約7〜8mの高さがあり、このフロアだけで通常の家屋の2階分に相当する高さを確保しています。
上記氷温庫に貯蔵タンクが搬入された後の様子です。
空調には、全体が均一に同じ氷温で保てる工夫が施されています。
ビン詰めされた酒を貯蔵する氷温庫になります。
もうしばらくすると、この部屋には氷温熟成される酒で満載になるとのことです。
蔵内の照明は、全館LEDを採用しています。
以下、加藤社長よりいただきました文章を一部転載して補足説明させていただきます。
今回の新蔵は、蔵の設備全部を引越しするのではなく、タンク貯蔵を含めた熟成酒を順次貯蔵いたします。現在の熟成庫もそのまま稼動を続けますので、今までの貯蔵庫と合わせて、合計2万〜2万5千石の長期氷温熟成が可能となります。
ビン詰めされた熟成酒の出荷は、この新酒蔵からの出荷を予定しており、その稼動を11月中旬から下旬を目標にしています。
上記に加えて、現在、今までの仕込み蔵の増設を行なっています。
外側に冷水が2段に回って冷やすことができ、より細かい温度調整ができる特注の仕込みタンク(6000kl用)を増設します。10月末にこの仕込みタンクが10本納入、今後1年以内にあと数10本導入する予定です。(もちろん、全て新品タンクです。)
同時に、現在11月の稼動を目指して、新麹室の増設も行っています。ステンレス製の大型の室で、温度と湿度が微調整出来る新型の麹室を、3部屋増設予定です。今までの木の麹室も残す予定ですので、麹室は全部で4部屋となります。
梵が未来につながる、そして日本を代表する酒蔵を目指します。
お忙しい中、詳細な説明文を送っていただき、ありがとうございました。
(2011.10.4)
2011年9月、梵の新しい拠点となる新蔵が無事竣工を迎えました。
店主が2011年8月に訪問したときは急ピッチで工事が進められているところで、加藤社長から新蔵の説明を聞きながら見学させていただきました。
今回の新蔵は、ご覧のとおりたいへん大規模な建物になっています。
建物全体が氷温庫となっており、全館で1万〜1万5千石の長期氷温貯蔵が可能となります。
また、2011年の東日本大震災を受けて、マグニチュード8.5にも耐えられる設計に変更するとともに、
災害発生時には地域の人達の避難施設として利用いただけるようにと、屋上への外階段(建物左側)が設置されています。
建物は頑強な耐火構造となっているだけでなく、蔵の外部には写真の消化水槽が設置されています。
消化ポンプを稼動させて、約1時間の消火活動が可能となっており、地域の消火活動の拠点としての役割も果たします。
完成したばかりの新蔵内部の様子です。
3階にある作業所部分には「ソックダクト」と呼ばれる、布製の太い筒状の吹き出し口になっており、直接冷気が人に当たらないように工夫されています。
館内のエレベーターには三菱製の超高速エレベーターを採用。
1階から3階まで約4秒で到達するだけでなく、10円玉を立てて置いても倒れないほどの超静粛設計となっています。
聞くところによると、北陸地方では梵の新蔵が初めての設置になるそうです。
2011年10月現在、新蔵への引越しが進められてており、貯蔵タンクなどの機材が続々と運び込まれています。
新蔵の本格稼動は11月中旬頃を目標にしています。
今回の新蔵は2009年から設計が計画され、2011年3月10日に入札開始を行ったのですが、その翌日、3月11日に東日本大震災が発生しました。
加藤社長は建設をするかどうか大変悩んだそうですが、耐震構造や地域の人達への避難施設として使える建物として利用できるようにと、大幅に設計を変更して着工に踏み切りました。
当初、震災発生からの建設でしたので、資材調達などで大幅な遅れが心配されましたが、建設関係の方々から「震災のチャリティーに、命を賭けて参加されておられる梵さんには、喜んで協力いたします!」という言葉をいただいたそうです。
多くの人の熱い気持ちと、地域の人々の思う温かい気持ちが形になった、「梵」が未来につながる酒蔵となるべく誕生した酒蔵です。